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2011年3月24日木曜日

「相談事業研究集会」に参加

3月も下旬になるこの時期、今日も寒い一日でした。桜の蕾は春を待ちわびるように、少しずつ膨らんでいます。

24日、(財)大阪府人権協会の主催で「第2回相談事業研究集会」~発見・つなぐ・支える 相談事業の重要性を考えよう~に参加して来ました。相談支援従事者の資格を持つ自身にとっても興味のある集会でした。
基調講演は、特定非営利活動法人北九州ホームレス支援機構 ホームレス支援全国ネットワークの 理事長 奥田 知志氏の「絆の制度化・持続性のある伴走型コーディネート」というテーマで1988年から続いている活動についてでした。
・ハウスレス(物理的困窮)ホームレス(関係性困窮)の2つの困窮に同時に取り組むこと。
・人生の支援(自立支援を含む)→持続性のある出会いから生活、看取り、追悼までの伴走的コーディネートの必要性。
・PSS(パーソナルサポートサービス)からPSP(パーソナルサポートパーソン)へ。「人を支援するのは人である。」
・「制度またぎ」のコーディネートの実施⇒横断的支援(外的コーディネートの活用)
・絆A(公的絆)⇒絆B(地域的絆)絆C(支援を受けた本人が誰かの絆になる)
・社会的リスクマネージメントには傷が伴なう⇒健全に傷つくことの必要性。

ダルクという受け皿の中でいる自分にとって、時代の流れを感じ、戸惑いながら、サポーターという立場でどう関わって行けばいいのかのヒントを教えて貰えたように思いました。健全に傷つくこと、支援を受けた本人が誰かの絆になれることなどはダルクが拡がっていき、give&takeという人間にとって基本的な心こそ大切なことを確認させて貰えました。

シンポジウムでは「地域で支える相談事業を考える」をテーマにパネリストとして、4名の方のお話しがありました。
「福祉なんでも相談窓口」の中で「ごみ屋敷」支援という取り組みがあり、その中で、精神障害者、ひきこもりの家庭の中で、掃除が出来ない状況に陥った方の支援において、家庭訪問を重ね、本人の心に寄り添いながら、部屋を片付けるという症例は役に立つように思いました。

今回、参加させていただき、いかに地域の社会資源を活用し、行政機関とのネットワーク作りが大切か再認識することが出来ました。ありがとうございます。30日に2回目が行なわれる京都府再生コラボカフェに活かして行きたいと思います。

      笠嶋

薬物問題をもつ家族への援助研究―心理教育に基づく実験援助モデル開発とその評価

詳細
第1部 現状編(薬物当事者と家族の実態)
第2部 理論編(アルコール・薬物家族援助の理論的枠組み;先行研究を統合した薬物家族への心理教育の理論化とその実験援助モデルの構成)
第3部 実践編(薬物家族への心理教育に基づく実験援助モデルの実践と調査による評価;実験修正援助モデル実践の評価および援助モデル実践の評価との比較検討)
結論 研究結果に基づく薬物当事者・家族の明日への提言

著者紹介

西川京子[ニシカワキョウコ]
出身地:奈良県。最終学歴:関西学院大学大学院博士課程後期課程修了。1973年4月大阪府豊中保健所精神衛生相談員。1977年7月藍陵園病院ソーシャルワーカー。1988年9月新阿武山クリニックソーシャルワーカー。2000年4月福井県立大学看護福祉学部社会福祉学科講師。2010年3月福井県立大学看護福祉学部社会福祉学科准教授を定年退職、2010年4月新阿武山クリニック非常勤PSW。社会活動:2004年よりNPOフリーダムにおいて「薬物家族支援プログラム」を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

薬物問題をもつ家族への援助研究―心理教育に基づく実験援助モデル開発とその評価 [単行本](amazon)

2月の家族プログラム

 東北地方太平洋沖地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 大変遅くなりましたが、2月27日に行なわれた「家族プログラム」の報告をお届けします。2月のテーマは「薬物依存~依存の過程」でした。15名の方がおみえになりました。薬物依存を巡る状況は、この10年で様々な変化がありました。「薬物依存」という言葉が、少しずつ、でも確実に、社会に浸透してきていると感じます。しかしその一方で、薬物依存がどのような病気なのかについては、まだまだ誤解や偏見が根強く、正確な情報が行き渡っていないのが現状です。薬物依存の「薬物」がどのような薬物を指しているのか、薬物依存がどのように進行するのか等を、ご家族の方が知ることは、自分の身近な人に何が起こっているのかを、より深く理解するになります。そして、自分が対峙している問題と、少し心理的距離がとりやすくなると思います。
 でも、薬物依存は深刻な病気です。その深刻さを、1人っきりで受けとめようとすると、ご家族の方自身が、孤立感や不安に包まれて、身動きができなくなってしまうでしょう。だから「家族プログラム」のように同じ立場の方に「出会い、つながる場」で、ともに支え合いながら、理解を深めていくことが大事になります。「家族プログラム」では、毎回後半の約1時間を、参加者の気持ちの分ち合いの時間にしています。カウンセラーが、参加者のみなさんが、安心して話すことができるようにサポートします。薬物依存に関する理解を深める同時に、安心して「仲間」とつながれる場としての「家族プログラム」を、参加者のみなさんと一緒に大事にしていきたいと思います。
 
 「家族プログラム」では、お1人おひとりのお話を、ゆっくりと整理することは、時間的な制約があるため、難しい状況です。京都DARCでは、お1人ずつの状況にあわせ、気持ちをほぐしながら、今後どうしていくかなどをお話しする場として、予約制で個人カウンセリングを行っています。ぜひ、「家族プログラム」とあわせて、ご利用ください。お問い合わせ、ご予約は、京都DARCまでお電話をお願いします。

カウンセリング予約電話番号
075-645-7105
(月)~(土)9:00~17:00

家族ケア(地域創造基金)

2011年3月20日日曜日

大阪ダルクとソフトボール交流!!












17日、雪の降る寒い日でしたが、予定通り新大阪駅近くのグランドにて、大阪ダルクとのソフトボール交流を行ないました。試合に向けて練習を重ねて来ました。身体を動かすことは気持ちいいものです。みんな声を上げながらキャッチボール、ノック、シートバッテッングで程よい筋肉痛^^。

試合は2試合、健闘空しく連敗。途中で吹雪きによる中断もあり、凍える身体の中、みんなベストは尽しました。力を合わせ、声を掛け、真剣な顔、笑いも有り、楽しいひと時を過ごすことが出来ました。負けたのは悔しいけど。
京都、大阪をシャッフルしての3試合目はファインプレーの連続。引き締まった戦いになりました。0対0のまま、最終回裏の攻撃、京都のなかまのサヨナラヒット!!。

お互いの健闘をたたえ合いました。誰も怪我することなく、無事終えたことが一番ですね。大阪ダルクはベリーカップを控えているようです。今年は優勝出来るよう応援しています。

 笠嶋

薬物乱用防止対策に係る打ち合わせ会議に参加

3月17日、京都府公館にて「薬物乱用のない社会づくり きょうとふプラン~京都府薬物乱用防止中期戦略~」に係る打ち合わせ会議が行なわれました。
京都府健康福祉部薬務課が担当部課になり、京都ダルクから出原、笠嶋が参加しました。

・薬物乱用防止相談窓口について
既に舞鶴医療センターにて行なわれている(北部移動相談)の実績、予定が話し合われました。相談窓口の共有、資料つくり、医療機関の受け皿についてなど。

・薬物再乱用防止教育について
明日への扉を今開こう!~OPEN~若年者向け薬物再乱用防止プログラムの報告が行なわれました。
2011年8月から開催されます。

2時間程の会議でしたが、各関係者から色んな意見、提案が出され、有効な時間を共有出来ました。ありがとうございます。

  笠嶋

2011年3月13日日曜日

東日本大震災

金曜日の午後、テレビのニュースを観ていた。東京のスタジオからである。震源は関東と思った。自宅の部屋の電気が揺れていた。すぐに速報が流れた。「震源は宮城県沖、震度7」それからは各地の津波の映像の連続。防波堤を越え、海岸線の街を呑み込んで行く。車が家が流されて行く。未曾有の出来事。

自然の凄さ、恐さを改めて知らされた。人間の無力さを思い知らされた。チェーンメールが届いた。”電気を消して協力しよう”という内容。ヘルツの違う西日本で役に立つのか、誰かに送っていいのか迷ったが思わず転送していた。何が出来るかわからない。秋田ダルク、鶴岡ダルクに電話した。秋田は停電になり、水道も止まっているようで、山形ダルクに避難したようだ。仙台ダルクはみんな無事でいるようだ。

施設長の加藤とのメールで、「どんな援助が出来るかなぁ?」「祈ること、連絡して訊くこと。物資を送っても届かないかも。」とやり取りした。他のスタッフとは「テレビのどのチャンネルも同じで、これこそが電力の無駄使いちゃうの。」ってやり取りも。

今回の地震、津波で被害を受けられた方々に心よりお見舞い申し上げます。

 さとし

2011年3月10日木曜日

ドラッグと刑罰なき統制―不可視化する犯罪の社会学 [単行本]


結論から言えば、日本のドラッグ問題は深刻である。しかし、その深刻な状況は、法的秩序が関知しない地帯で生じている。
逮捕・拘禁しないままに、彼らの《生》を実在未満の存在として生きるままにしておく地帯が――おそらく相当おびただしく――存在する。ドラッグを使う本人が加害者であり、被害者でもあり、その行為を希望する人間でもある場合、被害者という立場のみを強調することはできない。しかし、ドラッグによって「被害者」となるのは、ドラッグを使う本人だけではない。使用者本人ではないにも関わらず、生きづらさの重圧に巻き込まれる当事者が隠されている。それは犯罪者の「家族」、ドラッグ使用者の「家族」である。そうした人びとの問題を明るみに手繰り寄せていくことが、ドラッグ問題の構造的ひずみを解き明かす鍵となるはずである。

内容(「BOOK」データベースより)
結論から言えば、日本のドラッグ問題は深刻である。しかし、その深刻な状況は、法的秩序が関知しない地帯で生じている。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
本田 宏治
1976年生まれ。2008年立命館大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。専門社会調査士。龍谷大学矯正・保護研究センター博士研究員を経て、現在、日本学術振興会特別研究員PD。専攻は社会病理学、臨床社会学、犯罪社会学、家族社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

ドラッグと刑罰なき統制―不可視化する犯罪の社会学(amazon)

2011年3月9日水曜日

同じ空の下 Under the same sky 薬物依存症との闘い。


誰でも薬局で買える市販薬の「咳止めシロップ」で、まさか「薬物依存症」になるなんて、当時は知らなかったし、誰も教えてくれなかった。今は、「ダルク」に繋がる事が出来て本当に良かった。回復に向かい走っているその時...

本詳細 「同じ空の下 Under the same sky 薬物依存症との闘い。」
無料で読める電子書籍 モッテコ書店

2011年3月4日金曜日

スマイルありがとう

3月に入り、寒の戻りで京都は昨日、吹雪いていました。寒い中、17日の大阪ダルクとの、交流試合に向けてソフトボールの練習をしました。ダルクから自転車で15分、河川敷のグランドで「寒~い><」と言いながら、キャッチボールから始めました。ノック、ティーバッティングをする内にちょっと汗も掻きました。身体を動かすこと、声を出すこと、笑うこと、一緒に楽しむこと。全て大切なフェローシップですね^^。定期的に練習しましょう。怪我のないことが一番ですが、、、。週末はみんなで、ジム、プールの予定です。

訃報が届きました。御殿場で療養中のスマイル(大木文夫さん)が68歳で亡くなりました。昨年、再会を分かち合いました。大木さんとの出逢いは24年前、自分が東京ダルクに入寮した日、初めてNAのミーティングに参加した時、握手とハグと白いキータッグ(ようこそを込めた)をくれた大切ななかまです。初日に寮の掃除を一緒にしたことを覚えています。横浜のミーティングに一緒に通いながら、NAを広めて行きました。大木さんの家にもよく遊びに行きました。叱られもしました。大木さん自身が近藤さん、外山さん、ロイさんから貰ったものを、自分に教えてくれました。大木さんが面接を50ヶ所くらい通いやっと受かったアルバイトに自分を誘ってもくれました。名古屋でも一緒に歩きました。「いいんだよ。歩けば。出逢いを求めてミーティングに出てれば。」自分の基礎を教えてもらいました。大木さん、安らかに。空でなかまと分かち合って下さい。ありがとう。

                                    さとし
 

京都DARC ホームページ更新

ニュースレターNo.41号をUPしました。

拝啓 立春とは名ばかりで寒い毎日が続いております。皆様にとってどんなお正月だったでしょうか。旧年中は、多くの支援者に支えられ7 周年記念フォーラムも成功裡に終えることができました。沢山の仲間、支援者とフォーラムを共有できたことに感謝しております。

そのフォーラムでも挨拶がありましたが、阪本が12 月に兵庫ダルクを立ち上げるべく退職、後任に新たなスタッフを採用いたしました。タケこと大久保猛とヒロこと淀宏の2 名です。至らないところも多々あるとは思いますが、良きスタッフとなるようご指導ください。

昨年の仲間との出来事を振り返りますと刑務所から多くの仲間がつながってきました。お正月に気兼ねなく帰れる実家のない者、帰らないほうが良い仲間がおりました。この年末年始の京都ダルクはカレンダー通りに12 月26 日(日)と1 月2 日(日)のみをお休みとし、多くの仲間とともに年末年始を過ごしました。年末には支援者より餅つき用のセットをお借りし、12 月30 日に小雨が降る中、仲間たちと餅つきをしました。

みんなが少しずつ役割を担い、初めて餅つきをする仲間もおり、喧々諤々、和気あいあいと楽しく、おいしいお餅をつくことが出来ました。おまわりさんが来て注意を受けたりもしましたが、道行く人がときどき足を止め餅つきを懐かしそうに見て行ってくれました。タイミングが合わず、その人たちにつきたてのおもちを食べていただけなかったのが残念ですね。年が明け、おせちにお雑煮、初詣、銭湯での初風呂、仲間同士のトラブルと和解、色々あるけど、お酒や薬物を使わず、仲間たちと良い新年を迎えられたと思います。

今年は京都府の「薬物乱用のない社会づくりきょうとふプラン-京都府薬物乱用防止中期戦略-」も始まるようです。また、刑務所出所の高齢者や障がい者を支援する、地域生活定着支援センターもいよいよ動き出すと聞いております。さらに薬物を使わずに新しい生き方を始めようとする仲間への環境も整いつつあります。こういった支援は結果的に多くの市民が安全に安心して暮らしていく社会を作る一助になると信じています。

ダルクにおいても、回復した仲間の就労の場やミーティング以外にやりがいや楽しみのある場を作っていきたいと考えております。昨年よりレザークラフトを始めておりますが、それ以外にも農業などできればよいなと思っています。

ぜひ、皆様のお知恵とお力を今後ともお貸しいただけるようお願い申し上げます。皆様にとって新しい年が希望に満ちた幸多き年となりますようにお祈りいたします。
敬具

ひとに まちに ありがとう 京都のためのチャリティキャンペーン

カンパイチャリティとは?

「カンパイ!」が社会貢献に。
キャンペーン期間内に協賛店舗が提供する「カンパイチャリティメニュー」を注文すると、販売額の一部がチャリティ(寄付)として京都のNPO・市民活動団体に届けられ、暮らしやすい豊かな地域社会づくりに役立てられるチャリティシステムです。

"KANPAI" for smiles
「あなたのカンパイが、まちの笑顔に生まれ変わる」をテーマに公益財団法人京都地域創造基金が、京都の飲食店とともに実施する京都発で日本初の地域展開型チャリティキャンペーンです。

京都の飲食店でカンパイ、食事をすることで、「お店」も
「まち」もよりよく元気にしていくことを目指しています。

カンパイチャリティ詳細(京都地域創造基金)

串だいにんぐ浪漫家 藤森店
キャンペーン期間:3月4日〜4月17日
メニュー ハイボール全品
寄付額 1杯につき20円
寄付先 薬物乱用・依存防止のための学校講演事業[京都DARC]
店舗情報 住所:京都市伏見区深草キトロ町33-10
電話:075-645-1700
ホームページ:http://www.romanya.jp/shop/fuji/index.htm

居酒屋 だがしやさん
キャンペーン期間:3月4日〜4月
メニュー 愛のおまかせセット(1,500円)
寄付額 1セットにつき100円
寄付先 青少年の薬物乱用・依存防止(学校講演)事業 [NPO法人京都DARC]
薬物依存症者の家族心理ケア事業 [NPO法人京都DARC]
店舗情報 住所:京都市伏見区深草西浦町7丁目67
電話:075-646-3334

2011年3月3日木曜日

さよならスマイルさん ~放蕩息子の帰宅~


さよならスマイルさん 
~放蕩息子の帰宅~
石塚伸一(龍谷大学)

2011年3月1日、スマイルさんの訃報に接した。御殿場の施設で亡くなったとのことで、清潔なベッドの上での安らかな死だったそうだ。おそらく年齢は70歳になろうとしていたはずだ。

【スマイルさんとの出会い】 
わたしがスマイルさんとはじめて会ったのは、NHKの朝の連ドラで「ふたりっこ」をやっていたころだった。1996年10月から翌97年の放送であるから、そのころであろう。ストーリーは、大阪の下町で丙午の年に生まれた双子の麗子と香子の成長と彼女らを取り巻く人たちの人間模様を描いたもので、売れない歌手のオーロラ輝子や賭け将棋を生業とする真剣師の銀じい(佐伯銀蔵)など個性的な人物が織りなすドラマで、双子の子役マナカナが人気をはくした。

8時15分から15分間の放映で、当時、北九州に住んでいたわたしは、子どもたちと朝ごはんを食べながら連続ドラを見るのが日常的習慣になっていた。ときに箸を止め、この罪のないドラマを見るのが朝のいつもの風景であった。

それは、毎日といっていいだろう。エンディングの音楽が流れ、それが終わるかおわらないかのタイミングで電話の音が鳴る。電話の先はスマイルさん。話の内容は、いい物件があるから借りたいとか、支援をしてくれるという人がいるとか、新しくダルクをつくるとか、景気のいい話のオンパレード。そして最後はいつも、来月になれば大金が入るから、それまで部屋代や水道料金が何とかならないかと金の無心。妻1人、子ども2人のしがない公立大学の教師には、到底お金の都合などつくはずもなく、みんなにチャリティーを呼び掛けたり、講演会をしてカンパを集めたりのお手伝いをするくらいしかできなかった。それでも、スマイルさんは、毎朝、エンディングの前になると電話を掛けてきた。「ふたりっこ」のファンだと言ったことがあるので、邪魔しちゃいけないと思って、電話の向こうでいまかいまかとエンディングの音楽が終わるのを待っていたのだろう。

【研究者やめますか?大学やめますか?】 
その頃わたしといえば、もう大学を辞めて何か違う仕事を探そうかと考えていた。1992年から93年にかけてドイツに留学し、社会治療という刑事処分について調査研究し、被収容者の自己決定を基盤として、社会復帰の支援をする新たな刑事制裁の在り方を模索していた。しかし、そこには大きな壁がそそり立っていた。

刑罰が人の犯罪行為に対する制裁であるということは誰も否定しない。しかし、その執行については、ただ苦痛を課すだけでなく、その人の改善更生・社会復帰に役立つもののほうがいいような気がする。刑罰的害悪を付加については責任に対する制裁であるということで説明できるが、改善更生を強制する根拠は一体なんなのか。

改善という以上、「善」すなわち、正しい方向にむけて変わることが求められるわけだが、何が善なのかはかならずしも明確ではない。ある時代、ある場所では善であったことが、ある日突然、悪になることがある。お国のためと敵を殺して勲章をもらっていた人が、敗戦によって犯罪人になるのである。戦前の少年刑務所では、窃盗や暴行をはたらいた少年たちと一緒に社会主義運動に傾倒する少年が収容され、「愚かにも国体に反するような思想を信じたこと」を反省させる作文を遷善更生のために書かせていた。

こう考えてくると、改善更生は強制できないのではないかということになる。さりとて、刑罰は最低限度の害悪の付加であるから、刑務所に拘禁して移動の自由を奪うだけで、服役中の毎日を無為に過ごすことは人間の本性に反しているように思う。外にいれば、善いと思うことも、悪いと思うことも繰り返し、反省しながら、人は成長していく。失敗は成功のもと。つぎのチャレンジへの布石である。

「自由の拘束をできるだけ縮減しながら、他方で社会復帰に向けての支援を保証する」そのような論理構成はありえないのか。これがわたしの前に立ちふさがる大きな壁であった。

【黄昏のブタペスト】 
その解答は、黄昏のハンガリーのブタペストの街を歩いているときに降りてきた。すなわち、

自由刑の刑罰内容は身体の現実的移動の制限に尽きる。しかし、人間は拘禁されていなければ、限りない自己啓発(Selbstentfaltung)――ギシギシ巻かれた発条(ぜんまい)が爆(は)ぜるときの様子を想起せよ。――の可能性をもっている。しかし、拘禁されていることでその可能性が奪われてしまっている。そこで、本来の刑罰内容である拘禁に伴う弊害を可及的に排除し、埋め合わせをするため国は、受刑者を支援しなければならない。受刑者には社会復帰をする権利があり、国にはそれを支援する義務がある。

このようにして難問は、一瞬で解決した。ところが、それはあくまでの理論的な話で、現実にこのようなことを実行できるかが問題になる。

ドイツ憲法――基本法という。――には「社会的法治国家原則」というものがあって、「レーバッハ判決Lebach-Urteil」という連邦憲法裁判所の判決が、犯罪をおかしてしまった人と社会との関係については明らかにしている。すなわち、

犯罪をおかした人もまた、人間の尊厳に由来する基本権の担い手として、みずからの刑を務めたのちは、再び共同体の中でみずからを位置付ける機会を与えられなければならない。社会復帰――ドイツでは、再社会化というのは一般である。――は、これを行為者の側から見れば、基本法1条に拘束された同第2条1項から生ずるも個人の利益である。他方で、これを社会の側から見れば、社会国家原則は、人格の弱さや行為責任、能力の不足や社会的差別によって人格的および社会的な成長発達が妨げられている社会的諸集団に対して、国が配慮し、保護することを求めているということを意味する。受刑者や刑余者もこの例外ではない。したがって、犯罪をおかした人の社会復帰は、社会それ自体の保護にも役立っているのである。つまり、行為者が再び犯罪をおかさないということは、共同体とその構成員に新たな損害を与えないということである。その意味では、社会自体が、受刑者の社会復帰によって直接的な利益を得ていることになる(BVerfGE 35,236)。

ところが、日本にはこのような憲法原則がない。平等原則や幸福追求権、教育を受ける権利や勤労の権利その他の社会権条項から社会復帰の権利を論理的・体系的に導き出すことになる。 

現実はもっと厳しかった。ドイツのようにソーシャルワーカーや心理療法士、社会教育者のポストが刑務所の中にも常勤職として配備されている国とは異なり、日本ではその足場がない。本人の自由な意思を尊重するといっても――『被収容者処遇法』第30条は「受刑者の処遇は、その者の資質および環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起および社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うものとする」と規定する。――、プログラムの企画や情報の提供、受講の働きかけがなければ、社会復帰の意志は芽生えず、理念は絵に描いた餅に終わる。日本では、社会復帰処遇は、到底、不可能だと思い込み、悲嘆に暮れていた。

【スマイルさん登場】 
そこに登場したのがスマイルさんだった。クスリを止めて10年以上になるが、いまでも自分は回復途上、依存症が完治したわけではない。ミーティングと仲間の存在がクスリを止めてくれているにすぎないとみずからを語る。ミーティングの場を増やし、回復したいと思っている仲間を支援するためにお金を集め、つぎつぎとダルクを立ち上げる。彼こそが、自分の意志で回復のために頑張る「セルフヘルプ」のモデルだと思った。そうであれば、わたし個人も、地域社会も、そして政府も、彼らを支援する義務があると考えた。

そして、北九州にはダルクができた。シンナー乱用の発祥地などといわれ、薬物中毒・依存に効く薬はないと諦めていた人たちが回復への希望をもちはじめた。そう、ダルクができて地域が明るくなったのである。
 
新約聖書の「ルカによる福音書」第15章は、厳格なユダヤ教の律法を守れない人たちを蔑んだファリサイ派の律法学者にキリストが反論する姿が描かれている。キリストは3つのたとえ話をする。1つめは見失った羊が戻ってくる話、2つめは銀貨を無くした女がそれを見つける話、最後は放蕩の限りを尽くして落ちぶれて帰ってきた息子の話である。

画家レンブラントは、その晩年に「放蕩息子の帰宅」という絵を描いている。すなわち、

ある人に息子が二人いた。弟の方が父に財産を生前に分け与えるよう頼み、父はそれに応じた。弟は家を飛び出し、浪費と贅沢の末に財産を無駄遣いしてしまった。弟は自分の行為を悔やみ、恥を忍んで父の元に帰る。すると弟を迎えた父は盛大に息子の帰宅を喜んで祝う。それを見た兄は父に不満を訴えた。父親は言った。

「子よ、お前はいつもわたしと一緒にいる。わたしのものは全部お前のものだ。だが、お前のあの弟は死んでいたのに生き返った。いなくなっていたのに見つかったのだ。祝宴を開いて楽しみ喜ぶのは当たり前ではないか。」(第15章31-32節)。

一度は、もうわたしたちのもとに戻ってこないだろうと思った薬物中毒・依存の人たちが、社会に戻ってきて、みんなの手助けをしている。彼らの回復は、当事者自身のためだけではなく、周囲の人たちにも大きな喜びと希望を与えている。

わたしも、喜びと希望を与えてもらいました。研究を止めてしまおうかと迷っていたときにスマイルさんに助けてもらいました。いまも、大学で研究をつづけています。
 
スマさん。本当にありがとうございました。安らかにお休みください。

(追記) レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン(Rembrandt Harmenszoon van Rijn)は、「放蕩息子の帰宅 "The Return of the Prodigal Son"」を自らの息子ティトゥスを失った1668~69年頃に描いたという。そして、彼自身は、その翌年に世を去った。その絵は、サンクト・ペテルブルグ、エルミタージュ美術館に所蔵されているとのことである。

2011年3月3日 風花の舞う深草の研究室で

龍谷大学 矯正・保護総合センター提供講座 薬物依存からの回復支援者養成セミナー - 日本版ドラッグ・コートのススメ -

龍谷大学 矯正・保護総合センター提供講座 
薬物依存からの回復支援者養成セミナー
- 日本版ドラッグ・コートのススメ -

講座概要
わたしたち龍谷大学のグループは、この12年余の間、覚せい剤などの違法薬物の乱用や依存の研究をしてきました。また、薬物依存症からの回復のための自助グループとして25年以上活動してきたDARC(ドラッグ・アディクション・リハビリテイション・センター)のみなさんと一緒に回復の問題に取り組んでいます。

 これまで、日本における薬物問題は、覚せい剤やシンナーなどの禁止薬物の乱用や依存を中心に議論されてきました。「覚せい剤止めますか?人間やめますか?」「ダメ、ゼッタイ!」などというスローガンに象徴されるように、その対策は、処罰と威嚇に頼っています。しかし、最近では、乱用薬物も、マリファナやライターのガスなどに広がり、精神安定剤や鎮痛剤のような処方薬や売薬への依存も大きな社会問題になっています。わたしたちは、薬物への依存に対しては処罰だけでなく治療が必要であるとの理解にもとづいて「日本版ドラッグ・コート」という構想を提案し、この分野の専門家や当事者、家族の方々の注目を集めています。おそらく、現在の日本ではもっとも先進的な提案だと思います。

 今回は、薬物問題の研究者・回復者などの協力を得て、薬物問題をどのように位置付け、どう対処していけばよいのかをみなさんと一緒に考えてみたいと思います。模擬ミーティングなども企画していますので、是非ご参加ください。なお、実習などもあるので、人数を60人程度に限らせていただきます。

 今回のセミナーは、薬物依存からの回復支援者や相談者になりたいと考えている方たちの研修にもご利用いただけるような内容になっています。

受講対象者
 薬物問題および依存症からの回復支援に関心をお持ちの方。精神保健福祉、司法、教育などの各関連機関の研修にもご利用ください。

講座日程
(1) 6月18日(土) 担当:石塚 伸一
 薬物問題の現状と課題 ~なんか変じゃないですか?~ 
(2) 6月18日(土) 担当:近藤 恒夫
 薬物依存からの回復 ~DARC25年のあゆみ~ 
(3) 6月25日(土) 担当:尾田 真言
 アメリカの取り組み ~ドラッグ・コートとはなにか?~ 
(4) 6月25日(土) 担当:丸山 泰弘
 日本の取り組み ~日本の薬物政策の現状と課題~ 
(5) 7月2日(土) 担当:加藤 武士
 当事者として、支援者として ~ミーティングをやってみよう~ 
(6) 7月2日(土) 担当:市川 岳仁
 当事者カウンセラーの葛藤と憂鬱 
 ~二重の役割(ダブル・ロール)を乗り越えるために~ 

テキスト
石塚伸一 ほか「DARS(Drug Addiction Recovery Support) の理論と実践」(2010年)
※初回講義時にお渡しします(料金は受講料に含まれています)。

受講料 会員:7,100円 一般:10,700円
定 員 60 名
募集状況 近日募集

REC(龍谷エクステンションセンター)
RECコミュニティカレッジ現代社会コースにて詳細掲載中

2011年3月1日火曜日

Narcotics Anonymousのオープン・スピーカーズ・ミーティングに参加


昨日までの温かさから冬の天気に戻ってしまいました。弥生に入った途端ですが、、、。体調管理に気をつけましょう。

去る2月27日、NA(ナルコティクスアノニマス・薬物依存症者の相互援助グループ)中部エリアのオープンスピーカーズミーティングに利用者と共に参加して来ました。テーマは「新しい生き方」愛知県三河地区豊橋市での開催でした。

当事者、家族、関係機関など100名程の参加者が会場を埋め尽くしていました。仲間の話しを中心に、薬物の体験からNAに繋がり、仲間と出逢い、ミーティングに参加し、薬物なしの新しい生き方を見つけ、自分を振り返り、今日だけを生きる術を語っていました。演台に立ち緊張しながら、正直に自分の物語を話す姿を見て、かつての自分を振り返ることが出来ました。京都ダルクの仲間も時間が与えられ、緊張しながらも、堂々と自身の物語を話していました。懐かしい仲間との再会、新しい仲間との出逢い。「新しい生き方」には大切なことです。

エビフライ、味噌カツ、味噌煮込みうどん。地元の名物も楽しみました。夜のミーティングにも参加し、京都に戻ったのは11時過ぎ。心地良い疲れと車中の会話を楽しみながら、それぞれのホームに帰って行きました。事故もなく無事、帰って来れて良かった良かった。

また新しい出逢いを求め、みんなと出掛けたいと改めて~希望と勇気~を貰うことが出来ました。感謝。
サトシ